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あゝ同期の桜
67・107分
(監)中島貞夫、(出)鶴田浩二、高倉健、松方弘樹、千葉真一、佐久間良子
学徒出陣で航空隊に入った男たちが特攻作戦に出撃することに。
話の内容はいかにもありがちだし、飛行機の飛んでいるところなど今の目で見ればつくりものっぽくみえるが、登場人物の心情や描き方はしっかりしている。ただ苦悩や葛藤がこちらにひしひしと伝わってくるというわけでもなかった。もう少し個人の生い立ちや育った環境を描いておけば、入り込めたろう。
ああひめゆりの塔
68・127分・白黒
(監)舛田利雄、(出)吉永小百合、和泉雅子、浜田光夫
沖縄戦で看護婦として従軍し、全滅した女子生徒たちの姿を描く。
伝えたいところの悲惨な場面はしっかりと描かれていて、特に吉永小百合が気絶しそうになった場面はこっちもくらくらした。ただ都合良く敵の砲撃が当たったり、敵機やその攻撃にも?マークを付けざるを得ないなど、病院のリアルさとストーリーの都合の良さのバランスは悪い。それでも当時の様子が伝わってきたので、星三つ。このほかに「ひめゆりの塔」という映画が3作あるのだが、私は見てない。もし他の方が良ければ点を星二つ半に落とす可能性アリ。
愛と希望の街
59・62分・白黒
(監)大島渚、(出)藤川弘志、望月優子、富永ユキ、渡辺文雄
貧乏生活をしている少年が、鳩を売っていた。その鳩を金持ちの娘さんが買ったのだが・・・・
60分ほどの短い映画だが、しっかりとした話の内容で、貧乏映画として文句ない出来。まあ素行調査ってのはやりすぎですが。
途中「第三の男」ばりに画面が傾いていたりして、若い大島渚の気合いを感じる。
愛の讃歌
67・94分
(監)山田洋次、(出)倍賞千恵子、中山仁、伴淳三郎、有島一郎、千秋実、太宰久雄
瀬戸内海の小さな島で売店を営んでいるオヤジは、いつも息子にがみがみ文句を言ううるさいオヤジ。そんなオヤジのもとを離れ、息子は一旗揚げようとするが・・・。
久々につぼにはいって、泣きまくり。山田洋次の人情話の傑作のひとつ。話の内容、つくり、見事な役者とその会話は、全部覚えたいくらいです。
赤い殺意
64・150分
(監)今村昌平、(出)春川ますみ、西村晃主演
妾の子としての運命を背負って生きていかなければならないと、ぼんやり思っているぽっちゃりした女性は、同居している男との間に子供がいたが、まだ籍は入っていなかった。そしてある日、強盗がやって来る。
いかにも今村昌平監督らしい、しもの部分を含めた生活感あるドラマで、そのなかにユーモアがこめられているし、ひとつひとつの場面もしっかりしています。ラストに至る不倫相手の行動は少々無理があるような気もするが、全体的なつくりの良さを買って満点。
ばあちゃんが唸っている部分が入っているが、あれは何だろう、過去のしがらみということでしょうか?
赤線地帯
56・86分・白黒
(監)溝口健二、(出)京マチ子、若尾文子、木暮三千代、三益愛子、町田博子、川上康子
戦後の吉原の風俗店で働く5人の女の姿を描く。
溝口健二最後の作品。つくり、内容とも文句なし。それを演じた女優陣も見事です。あらためて溝口のすごさを実感。それにしても田舎から出てきた息子のぐしゃった顔、爆笑しちゃいました。
赤ひげ
65・185分
(監)黒澤明、(原作)山本周五郎、(出)三船敏郎、加山雄三、山崎努
江戸小石川で診療所を開く医者の元に、見習いとして一人の青年がやって来た。一見無愛想な医者に対し最初は良い印象を持たなかった青年だが、彼の行いを見て次第にすごさに気づいていく。
人情話の寄せ集めといった内容で、ひとつひとつの話もありがち。もちろんしっかりとしたつくりなので、文句を言うところはないが、面白さという点では星三つが限界。
悪党
65・115分・白黒
(監・脚)新藤兼人、(原作)谷崎潤一郎、(出)小沢栄太郎、乙羽信子、岸田今日子
足利尊氏の側近高野師直は権勢の極みの中で、侍従から絶世の美女の話をされ、是非とも会いたくなった。そして彼女が出雲の武将の妻であるにも関わらず彼女をものにしようと企むのであった。
つくりはしっかりしているが、内容がエンターテイメント系に近く、登場人物も月並み。美女が岸田今日子というのも・・・・
悪名
61・94分
(監)田中徳三、(出)勝新太郎、田宮二郎、中村玉緒、(原作)今東光
喧嘩の強さを買われてやくざの客分になった男だったが、一人の女を連れ出したことで大きな組を巻き込んだ騒動を巻き起こしてしまう。
つくりはしっかりしてし役者の演技も良いのだが、登場人物に今ひとつ特徴がない。また内容が喧嘩の連続というだけで盛り上がらなかった。
ある殺し屋の鍵
67・80分
(監)森一生、(出)市川雷蔵、西村晃
舞踊を教えている男、実は腕のいい殺し屋で、また殺しの依頼を受け実行するが、依頼主から裏切られ、復讐するのであった。
お粗末な内容。腕のいい殺し屋には全く見えないし、お金をあんなところにしまったりするのも理解不能。
いきものの記録
55・113分
(監・脚)黒澤明、(出)三船敏郎、志村喬、千秋実
町工場を営んでいる男が核兵器の恐怖におののき、安全であるだろう南米への移住を計画しはじめた。その唐突な計画に家族一同仰天、何とか止めようとするが・・・
核兵器というテーマで、ここまでしっかりとした家族のドラマにしているということに感服。「黒い雨」同様必見。
伊豆の踊子
33・124分・白黒
(監)五所平之助、(原作)川端康成、(出)田中絹代、大日方伝
伊豆に遊びに来た学生の男が、旅芸人の一団と出会った。そして若い娘に心惹かれるのであった。
こんなの原作にあったかなという出だしで、ちょっとは内容にひねりを加えてあるのかなあと思って見ていたが、結局は相も変わらずの内容。そもそも原作が映画に出来るような話じゃないと思えるが。私は講釈付きのビデオを見たので、映画と言うより活劇を見たという感じだった。
学生役の大日方伝はヨン様に似てません?
伊豆の踊子
63・83分
(監)西川克己、(出)吉永小百合、高橋英樹
川端康成の伊豆の踊子の映画化。
パッケージが白黒で、出だしが白黒だから、白黒映画かと思いきや、カラーです。
内容については評価するところはないが、伊豆の踊子を映画化したものとしては、まずまず。若い吉永小百合が出ていて無難な出来なら、文句を言ってはいけないでしょう。
別れたその後をいろいろ発展させていった方が、映画としたらおもしろかろう。
一番美しく
44・85分・白黒
(監・脚)黒澤明、(出)志村喬
戦時下、レンズ工場に勤労奉仕する女の子達が、生産目標に達するため頑張って働いていた。しかし頑張りすぎがもとで次第に疲労が蓄積され、つまらぬ事で諍いが起きてしまう。
撃ちてし止まむ 情報局選定国民映画 というすごい前書きがある映画。内容は工場で働く女の子達と先生と工場長の姿をありがちなドラマにしていて、お決まりごとという感じがプンプンするが、まずまずまとまっている。戦時下の映画をそう見る機会があるものではないので、興味のある人はどうぞ。
雨月物語
53・97分・白黒
(監)溝口健二、(原作)上田秋成、(出)京マチ子、田中絹代
戦国時代、陶工の男が壺を売りに出た。そして美しい婦人が彼の壺を気に入り、いくつか届けてくれと注文した。そして届けに行った陶工は、婦人の家でしばしもてなしを受けるのだったが・・・。
今私が見ても日本ってエキゾチックと思える出来で、自分が外国人になった気分で見ることが出来、面白かった。ヴェネチア映画祭で賞を獲ったのも納得。また、京マチ子の魅力はただならぬものがあるね。唯一文句があるとすれば会話の部分で、現代のあまり美しくない言葉を使っているところや、昔の力強い言葉が少なかったのは残念だ。
永遠の人
61・107分・白黒
(監・脚)木下恵介、(出)仲代達矢、高峰秀子、佐田啓二、乙羽信子
熊本の山間の村の地主の息子が、戦争で片足が不自由になり戻ってきた。その息子が、幼なじみの娘がいやがるのも構わず力づくでものにしてしまう。
狭い世間の村での家族の確執の物語で、話の期間が少々長すぎてあらすじっぽくなってしまった感じはあるが、話自体は昔はこういう事もあったろうと思えてまずまずの出来。ただ挿入される曲と歌がいくら何でもひどすぎる。「それがですねえ、それがですねえ」って何じゃそれは。
悦楽
65・90分
(監)大島渚、(出)中村加津夫、加賀まりこ
愛する人のために罪を犯し、それがもとで大金を手元に得た男が、その金をもとに女を囲い、派手に使い始める。
出だしから無茶な展開。ポルノの付け足しドラマならまだしも、まともにこんな劇画調の内容を映画にしたらいかんよ。
「エロ事師たち」より 人類学入門
66・128分・白黒
(監・脚)今村昌平、(原作)野坂昭如、(出)小沢昭一、坂本スミ子、近藤正臣
美容院を営む未亡人女性といい仲になった男は、エロい映画をつくって売るという商売をしていた。彼自身は引け目を感じていなかったが、裏の商売ということで暴力団ともめたり、家族の仲が悪くなったりするのであった。
今村監督がエロを描くのだから、もうすこしコメディの要素が入っているのかと思いきや、コメディの要素はあまりなく、少々あさましい感じが全体をおおう。何でもやってしまう人間を描こうという事だろう、確かに生活感のある描かれ方はよいが、あんまりすっきりする内容ではない。
狼
55・120分・白黒
(監・脚)新藤兼人、(出)乙羽信子、殿山泰治、高杉早苗、浜村淳、菅井一郎
戦後、多くの人が食べていくための生活に必死の中、保険のセールスの仕事についた面々は、何とか保険をとろうと頑張るが、世の中甘くはなかった。そして最後の手段に訴えるのであった。
動機という点で貧乏ほど強力なものはなく、それをきっちり使った映画として私は好き。特に、今でもひどい仕事の一つに思える保険勧誘員をきっちり描いているのは素晴らしい。また最初部屋に入って来るときのノソノソとした人の動きもしっかりしていて笑える。
大阪物語
57・96分・白黒
(監)吉村公三郎、(出)中村雁治郎、市川雷蔵、香川京子、勝新太郎、林成年、小野道子、中村玉緒
どん底の貧乏生活からはい上がり商売を始めた男は、家族や周りがあきれるほどのけちん坊だったが、商売は繁盛していた。
溝口健二監督が病床で構想を練っていた作品で、死後映画化。溝口の意志を継ごうという意気込みが感じられる役者陣とつくりだが、内容はいまひとつで、あんまり現実味を感じない。ケチを題材にするのは結構だが、ただそれだけという男の描き方も物足りなく感じた。
お嬢さん乾杯
49・90分・白黒
(監)木下恵介、(出)原節子、佐野周二、佐田啓二
自動車の整備工場を経営し羽振りの良い男に、育ちの良いお嬢様との見合い話が持ち上がった。ところが、よくよく話を聞くとそれには裏があった。
ほのぼのドラマで、これといって特徴がない。テレビで放送されるホームドラマ程度の内容。見どころといえば原節子の演技と昔の町並みくらいか。
乙女ごころ三人姉妹
1935・75分・白黒
(脚本・演出)成瀬巳喜男、(原作)川端康成「浅草の姉妹」、(出)細川ちか子、堤真佐子、梅園竜子
踊り子と三味線弾きで生活している姉妹の姿を描く。
昭和10年の映画で、当時の風俗を見ていればそれなりに面白い。黒いマスクにはちょっとびっくり。話の内容は地味でそんなにいいところがあるわけでもないが、昔の映画ならこんなものでしょう。
帰ってきたヨッパライ
68・80分
(監)大島渚、(出)加藤和彦、佐藤慶、渡辺文雄
海辺で遊んでいた大学生3人が、韓国からの不法入国者と間違われ、大騒動になってしまう。
無茶やりたい放題で、話の内容も奇想天外。ただ途中同じ場面が出てくるのだが、全体的に同じような事しかしてないので、後半尻すぼみっぽい印象を受けた。そうなると登場人物の薄っぺらさと、話の内容の薄っぺらさばかりが目立った。
隠し砦の三悪人 
(監)黒澤明、(出)三船敏郎、上原美佐、千秋実、藤原釜足、藤田進
戦に敗れた武将が、お家再興のための軍資金を持って隠れていた。そこに欲に目のくらんだ与太者二人がやって来る。
ジョン・ヒューストン監督の「黄金」っぽい設定がいいのだろう、どちらも面白い。
こちらは二人の農民がほのぼのとしていてコメディっぽくもあり、緊迫感はそんなになかったが、話の展開はしっかりとして文句ない。
こういったものなら今でも十分作れそうだが、作れないのはなぜなんだろう。どうしても歴史大河ドラマの方向に行ってしまうよなあ。
神々の深き欲望
68・175分
(監)今村昌平、三國連太郎、河原崎長一郎、北村和夫
南の小さな島ではまだ昔ながらの因習を守り生活していた。そんななかに島の開発をしようと本島から数人の者が派遣された。
南の島の話だが、爽やかなところが全くなく、島の人々の因習と現代社会の問題を持ち込んだ話で、文化人類学っぽい映画。すっきりした話の筋があるわけでもなく、また島の人たちの行動もいまひとつピンとこないので、ちょっと敷居が高い感じの映画。若い人には向かないだろう。
ちなみに、今まで見た映画で、いちばん強烈な字幕だった。
山椒大夫
54・124分・白黒
(監)溝口健二、(原作)森鴎外、(出)田中絹代、香川京子
母と子ふたりと従者のばあやが越後路を旅していた。その道中で親切そうなばあさんが宿を貸してくれると言うので、ついて行くと何と人さらいで、母子離ればなれになってしまう。
話の内容は母子が身売りされてしまう話で甘くはないが、中世に生きることの厳しさがしっかりと描かれているストーリーはさすが名作といったところ。また昔はそうだったのだろうと思えるセットの地味さ加減は、いまとなっては再現できないだろう。着物は派手だけど。ありふれているのかもしれないけど、白黒映画でススキが揺れるのは、とても幻想的だった。
カルメン純情す
52・103分・白黒
(監・脚)木下恵介、(出)高峰秀子、若原雅夫、淡路千景
ストリップダンサーをしていた女の子が、ヌードもでるのバイトをし、その絵描きを好きになってしまう。
「第三の男」の影響か、すごい傾いています。傾きまくってます。そしてとても見づらいです。話の内容もそんなに面白いとは思えなかったが、それ以前に必要性を感じない傾きに見る気が減退。
木下恵介監督は変わった挑戦をいろいろしているが、これはやりすぎ。
祇園囃子 
(監)溝口健二、(出)木暮実千代、若尾文子、河津清三郎、進藤英太郎
もと客であった男の娘が芸者になりたいと、祇園にやって来た。芸者はその娘は筋がよさそうなので、彼女の面倒をみることに。
話の内容はよくある話だが、つくりが良いのでついつい彼女らの境遇にハラハラしてしまう。さすがです。また芸者の仕事っていうのもよく分かって良かった。
それにしても、路地っていうのは絵になるね。
キクとイサム
59・116分
(監)今井正、(脚)水木洋子、(出)北林谷栄、高橋エミ子、奥の山ジョージ
黒人との間に二人の子をもうけた母が死に、ばあさんが引き取って育てていた。しかし肌の色が違うことから、村の人たちからいじめられるのであった。
1959年の作品だが、すでに谷栄さんは立派なばあさんで、見事な演技。話の内容も黒人とのハーフの話で、今でも十分通用する。
この時代にこういう映画が作られていたというのはすごい。反面現在町で黒人とのハーフっぽい子供を見かける事があるのに、
そういう話は作られないのは、当事者以外取っ付きにくい題材だからでしょうか。
きけ、わだつみの声
50・109分
(監)関川秀雄、(出)伊豆肇、原美保、河野秋武、杉村春子
徴兵されビルマに送られた学徒兵は、劣悪な状況下での軍隊生活を強いられるのであった。そして戦局は悪化の一途をたどっていく。
当時の悲惨さそのままに、悲惨な場面ばかりで少々気が重い。また、メッセージははっきりしているが、映画としてのストーリ展開という点では単調。
わだつみ、漢字だと海神。変換して初めて分かった。
キューポラのある街
62・100分・白黒
(監・脚)浦山桐郎、(脚)今村昌平、(原作)早船ちよ、(出)吉永小百合、東出英治郎
鋳物の街、川口に住む一家、父は昔気質の鋳物職人だが思うような職がなく、酒を飲んでは文句を言うばかり。娘は高校に進学したいと思っていたが、貧乏でそれも厳しくなっていた。また小学6年の長男も腕白な盛りで、在日朝鮮人の友達といたずらを繰り返していた。そんな一家の苦悩と葛藤を笑いと涙を交えて描く。
一家を中心に、関わりある人すべてが生き生きと描かれているさまは素晴らしく、喜怒哀楽というか人情味が凝縮してある一本。結構苦しい生活の場面が多いが、そういった中でも、本来笑うところじゃないのかもしれないけどおもしろおかしいし、別れの場面なんかは素直に涙が出てきます。というか、さんちゃんいいねえ。吉永小百合はこのとき14歳だそうだが、声はちょっとふけてるね。意外。
霧の旗
65・111分
(監)山田洋次、(原作)松本清張、(出)倍賞千恵子、滝沢修、露口茂、新珠三千代、川津祐介
有名な東京の弁護士に殺人事件の弁護をしてもらおうと、一人の女性が熊本からやって来た。
つくりはしっかりしていて文句ないのだが、内容については原作があるから仕方ないが、後半の似たような事が起こってしまう話の展開は強引と言わざるを得ない。
この作品が山田洋次監督唯一のサスペンス映画ということです。
斬る
62・71分
(監)三隅研次、(出)市川雷蔵、藤村志保、渚まゆみ、万里昌代
3年間の剣術修行で腕をあげた男が、大変な事件に巻き込まれてしまう。そして彼は己の生まれの秘密を知るのであった。
つくりから話の内容まで、眠狂四郎シリーズに似ている。背後に流れる電子音もどこかで聞いたような。それなりに面白いが、悪人が姑息ですっきりといった感じでもないかな。
蜘蛛巣城
57・110分・白黒
(監・脚)黒澤明、(原作)ウィリアム・シェイクスピア、「マクベス」より、(出)三船敏郎、山田五十鈴、志村喬
武勲をたてた将が、いくさの帰り道の森でもののけに出会った。もののけの予言では、彼が主君を押しのけ蜘蛛巣城の城主になるという。そしてその言葉が次第に心に影を落とし始める・・・。
疑心暗鬼という言葉そのままの、裏切り裏切られという戦国の世を見事に表している。三船敏郎の演技も素晴らしく、特に最後は圧巻。「乱」と少々似ているが、こちらの方が好き。
狂った果実
56・87分・白黒
(監)中平康、(原作・脚)石原慎太郎、(出)石原裕次郎、津川雅彦、北原美枝、岡田真澄
小さなヨットとボートを持っている金持息子の兄弟が、一人の魅力的な女性と出会った。そして純真な弟の方が彼女とつきあい始めるが、プレイボーイの兄も彼女に惹かれ始めるのであった。
当時憧れのプレイボーイの姿を、当時の雰囲気と勢いが伝わってくるように描かれている点はとても良いし、石原兄弟の青春を思い起こすことが出来るという点でも貴重で、不思議と懐かしい感じすらする。
日本の芸能映画界には疎い私だが、津川雅彦を長門裕之と思ってずーっと見てました(男になったときの微妙な表情は笑えるほどにうまい)。この二人が兄弟だったとは。若い頃は似てたんだね。あと岡田真澄にもびっくり。出ているのが分かっていながら最初分からなかった。
月曜日のユカ
64・94分・白黒
(監)中平康、(出)加賀まりこ、中尾彬
ナイトクラブで人気のユカは、かわいいが頭が悪そうで、会社社長の愛人をしていた。恋人もいたりして、何事にも気にかけないようなそぶりをしていた。
いきなり中抜き文字の字幕を出したり、普通とはちょっと違う映像を絡めたりしているのはいいが、面白さと結びついていないし、小手先だけという印象は否めない。
また、そもそも主人公の女性が、情熱も中身もないのは普通のドラマとしては厳しい。
剣
64・95分
(監)三隅研次、(原作)三島由紀夫、(出)市川雷蔵、藤由希子、川津祐介
大学の剣道部主将になった男は、自らを律し、厳しい練習を部員に課したが、部員の信頼は厚かった。しかし部長になり損ねた同級生の男から疎ましく思われていた。
いかにも三島由紀夫といった話の内容を、うまくまとめて描いてあり、内容はまずまず。つくりもしっかりしていて、本物の剣道部部員を使っての暑苦しい練習は臭ってきそうだったし、当時の男女関係を含めた学生の様子も今から見ると面白い。特に藤由希子演じる女の子はなかなか興味深いキャラクターだ。
原爆の子
52・100分
(監)新藤兼人、(出)乙羽信子、滝沢修、宇野重吉、山内明、清水将夫
広島で幼稚園の先生をしていた女が、原爆投下当時彼女のクラスだった子供たちを訪ねてまわるのだった。
主人公が先生ということで、「二十四の瞳」っぽいが、「二十四の瞳」同様人情と生活をしっかり描いている。加えて原爆によって生活が一変させられた人々の姿は痛ましいくらいに生々しく、原爆を描いた映画として一級品。
元禄忠臣蔵(前編、後編)
前編・41・112分、後編・42・112分・白黒
(監)溝口健二、(出)河原崎長十郎、中村翫右衛門
いろいろ問題点があって一般向けとは言えない。
古い映画ということで登場人物が分かりづらいし、何を言っているのか聞き取れない部分も多々あり。字幕付きでもう一度見なければならないな。
内容に関しては、どこに焦点を当てているのか分からずすっきりしない感じがあったし、討ち入りの部分が全く描かれていないのに、最後の場面で妙な人情話を付け加えたり、前編と後編で同じ場面があったのは、理解不能なところだ。
ただつくりはしっかりとしているし、話し言葉も古くてよかった。
河内山宗俊
36・82分・白黒
(監)山中貞雄、(出)河原崎長十郎(4代目)、中村翫右衛門(3代目)、原節子
甘酒屋を営むかわいい娘の弟が、囲われものの女に手を出したことで困難な立場に陥ってしまう。その解決の唯一の方法は娘は自らの身を売るしかなかった。
話の展開は「丹下佐善 百万両の壺」に似ているが、コメディの部分が欠落しているし、登場人物に魅力がないし、人情話にしても男ふたりが頑張りすぎで、そこまでするのかねえとも思えた。終わり方も妙に途切れた感じ。
ゴジラ
54・97分・白黒
(監)本多猪四郎、(出)志村喬、河内桃子、宝田明
太平洋で船が原因不明のまま消息を絶つという事件が続発し、巨大怪獣が襲ったという噂が広がった。
いきなりゴジラのテーマ音楽のなかスタッフと役者の名前が映され、出だしから威圧感あり。
最初のうちはゴジラの姿が見えず恐怖をあおり、あの出方はうまいよなあ。
さらに本土にやってくるのは夜だし。暗闇の中の恐怖というのは格別だし、あの炎や光る背びれも強烈。日本がアメリカに受けた攻撃を連想して少々冷静さを失ったほどだ。反戦とアメリカへの恨みと、被害を受けた人々の姿がしっかりと描かれていて、とにかく迫力があった。
まあ、話の展開としては、最後は少々物足りない気もしますが。
このあと横浜中華街でゴジラに追いかけられる夢をみて、うなされました。
五人の斥候兵
38・78分・白黒
(監)田坂具隆、(出)小杉勇、見明凡太郎、伊沢一郎
中国の日本部隊が敵の様子を探るため五人の斥候を派遣した。
内容がなく、古い映画としての価値のみに星半分。
座頭市物語 
(監)三隅研次、(出)勝新太郎、万里昌代、島田竜三、天知茂
盲目のあんまが宿場町にやって来た。彼の剣の腕を見たヤクザものの親分が、彼を味方にし、対立する敵と戦おうと画策する。
うわ、すごい。狡猾さと脅し、そしてすべてを見通しているかのような緊迫感は素晴らしく、さすが勝新太郎。また、人情と人間の汚さを厳しく表したストーリーも見事。北野武の「座頭市」も面白かったが、これと比べちゃいかんねえ。
錆びたナイフ
58・90分
(監)舛田利雄、(原作・脚)石原慎太郎、(出)石原裕次郎、北原美枝、小林旭、宍戸錠
暴力団の頭を検挙しようとした警察だったが、市民の協力がなくなかなか証拠が集まらなかった。そんな時殺人の目撃者が現れる。
つくりは悪くないが、内容はお粗末というかベタベタで、そういうものとして見て下さいまし。
山椒大夫
54・124分
(監)溝口健二、(原作)森鴎外、(出)田中絹代、花柳喜章、香川京子、進藤栄太郎、河野秋武
中世、旅の途上で人さらいに遭い、母と離ればなれになり、厨子王と安寿の兄妹は奴隷として働かされることになった。そして大きくなり生きる希望を求めて脱走をはかるのであった。
話の内容は母子が身売りされてしまう話で甘くはないが、中世に生きることの厳しさがしっかりと描かれているストーリーはさすが名作といったところ。また昔はそうだったのだろうと思えるセットの地味さ加減も素晴らしい。
ありふれているのかもしれないけど、白黒映画でススキが揺れるのは、とても幻想的だった。
地獄門
53・89分
(監)衣笠貞之助、(出)長谷川一夫、京マチ子
平清盛の留守を狙って反乱が起き、その時活躍した武者が一人の女性に一目惚れした。しかしそれは叶わぬ恋で、武者の焦燥は募るばかりであった。
カンヌ映画祭グランプリ受賞作ということで、期待して見ると、衣装がド派手という違った期待に応えてくれた。いろとりどり。ただ派手ではあるが品は良く、絵巻物風の映像はとても良い。ただ内容は期待したほどでなく、確かに人物の感情をきちんと描いているものの、メロドラマっぽくもあり、また、もう少し大きな戦いの場面なんかで盛り上げて欲しかった気もする。
十三人の刺客
63・125分
(監)工藤栄一、(出)片岡千恵蔵、里見浩太朗、内田良平、丹波哲郎、嵐寛寿郎
武士の礼儀作法を忠実に描いた通好みの映画で、何気ない立ち居振る舞いが当時の様子を彷彿とさせる。話の内容はしっかりしている程度でびっくりするほど良い訳でもないし、戦いの場面も少々物足りないが、礼儀作法によって映像が出来るというその点については、真剣に考えてもいいと思える。
縮図
53・133分・白黒
(監)新藤兼人、(出)乙羽信子、日高澄子、宇野重吉、山村聡
東京の下町で靴直しを営む男の家は貧乏で、娘が芸者として売られていった。そこで苦労を重ねるのであった。
身売りされた芸者の苦労話で、ありきたりな話ではあるが、細かいところまでしっかり描かれているし、当時の事情みたいなものも伝わってきた。
ただ面白かったかといわれると、いまひとつで、大きな筋がないのがきつかったか。それにちょっとうまくすれば十分楽していけるのに、ってなところもひっかかり、苦労話にしてはもの足りない描かれ方のように思えた。
雪ぞりに乗った選挙立候補者ってのは初めて見た。ふんぞり返っているやつは地方ならまだまだいるからねえ。
将軍と参謀と兵
42・92分・白黒
(監)田口哲、(出)阪東妻三郎
日本軍が、陣地を構築し抵抗を試みる中国兵を包囲殲滅する作戦を遂行する。
相変わらず敵はほとんどいない戦争映画。戦いの場面も少ないが、作戦を立てて部隊を移動させたりしているので戦っている感じはする。不思議なのは最後の言葉で、反戦ともとれなくはない。戦争真っ最中なのに。
醜聞 スキャンダル
50・104分・白黒
(監・脚)黒澤明、(出)三船敏郎、志村喬、山口淑子
人気女性歌手が若い画家と一緒に話しているところを写真に撮った雑誌社が、それを恋人発覚と書き立てた。それに怒った画家が事実無根として裁判に訴えることにした。
戦後間もない時期にマスコミの横暴さを描くというのは先見の明があるが、弁護士に貧乏人の役をやらせるのはきつかった。借金取りに追い立てられるくらいなら納得できたかもしれないが。
白い巨塔
66・150分・白黒
(監)山本薩夫、(原作)山崎豊子、(出)田宮二郎、東野英治郎、小沢栄太郎、田村高廣、船越英二
とある大学病院、手術の腕の立つ助教授は、次の教授候補の一番手と思われていた。しかし、彼の我が強く目立ちたがる性格がわざわいし、彼の上役である教授から対立候補を立てられてしまう。
名作文学のしっかりとした映画化。文句をつけるとすれば、あの程度で訴えられ、患者の方を弁護する医師がいたことくらいか。まあ、それは原作があるからいいとして、点に関して満点でないのは、期待が高かったのもあるし、初めて見るにせよ内容は知っていたので、満点を付けるほど面白いと感じなかった。
真空地帯
52・129分・白黒
(監)山本薩夫、(原作)野間宏、(出)木村功、神田隆、加藤嘉、西村晃
太平洋戦争末期の陸軍訓練学校に、軍規を破って刑務所行きになった男が戻ってきた。
陸軍学校の様子がしっかりと描かれている。上官絶対で体罰いじめなどが日常的に行われているその様子は、無茶な体育会系運動部みたいだ。それにしても細かな点まで作り込んであり、普段の受け答え、3年兵が唄っていた唄など、当時の様子がよく分かる。本当に殴っているようにも見えたしね。痛そう。
姿三四郎
43・97分・白黒
(監・脚)黒澤明、(原作)富田常雄、(出)藤田進、大河内傳次郎、轟夕起子、月形龍之介、志村喬
明治15年柔術の道場に入った姿三四郎は、その道場総出で柔道の大家を倒しに行くのに同行した。
黒澤明初監督作品。初監督なのにもはやすごい。すごすぎます。襖の開け方ひとつとっても、唸らせられる。
非常に聴き取りにくいところや、文章を読むところなど、字幕が必要なところが多いので、DVDで見ることをお薦めします。
切腹
62・135分・白黒
(監)小林正樹、(出)仲代達也、石浜朗、丹波哲郎、稲葉義男、三國連太郎
一人の浪人が、武勇の誉れ高き井伊家の大名屋敷の門前で、切腹する許しをもらうためにやって来た。
これはすごい。圧倒された。鳥肌が立って、手に汗握って、哀れで目が潤み、腹にまで力が入るという、私にとっては傑作の中の傑作。
潜水艦1号
41・106分・白黒
(監)伊賀山正徳、(原作・脚)永見隆二
明治43年4月15日、佐久間艦長率いる6号潜水艇が瀬戸内海において事故のため沈没し、艦長以下14名が死亡した。その遺体から見つかった遺書は後の潜水艦乗組員の教本となった。その佐久間艦長と同郷の子供二人が、大きくなったら潜水艦に関わる仕事につくと心に決めたのだった。
大きくなったら軍人になるというのは、戦前の男の子なら誰でも思っていたことで、この映画に登場する二人もお国のため一生懸命頑張っていて実に立派だ。また戦時中の軍の協力のもとの映画とはいえ、誇張じみたところがなく、当時の当たり前の考えが当たり前に描かれている点は良い。この映画に、その後潜水艦が撃沈される様子と、生き残った技師の終戦を付け加えれば、今でも十分通用する名作となるだろう。
続・座頭市物語
62・72分・白黒
(監)森一生、(原作)子母沢寛、(出)勝新太郎、城健三郎(若山富三郎)、水谷良重、万里昌代
前作から一年が経ち、座頭市が前作で刃を交えた男の供養に現れた。そしてそんな彼を甘く見た大名とやくざの両方から付け狙われることに。
前作の続き。72分と短く、この一本で話が展開しているとは言えないが、それでも勝新太郎の力で見せてしまうところがすごい。若山富三郎が勝新太郎の兄ということはさすがに知っているが、城健三郎の名は知らなかったので、最初は勝新太郎の一人二役かと思ったよ。ただ二人の描き方は少々物足りなかった。
続姿三四郎
45・83分・白黒
(監・脚)黒澤明、(出)藤田進、大河内傳次郎、月形龍之介、河野秋武、轟夕起子
名を成した姿三四郎であったが、柔術家から恨まれること甚だしく、ついに果たし状がやってくる。
続編もすごい。拳闘を見る外人の描き方や、遠くから聞こえる三四郎の歌など、見事です。こちらも字幕があった方が良いでしょう。
つまらない国語の授業より、姿三四郎を見せる方がよほど教育になると思うなあ。ただ学校の視聴覚室で見せられるのもたまらないが。
第五福竜丸
59・110分・白黒
(監・脚)新藤兼人、(出)宇野重吉、乙羽信子
昭和29年(1954年)ビキニ環礁で水爆実験が行われ、近海でマグロ漁をしていた第五福竜丸に死の灰が降った。その経緯と被爆後の乗組員を描く。
第五福竜丸という名前は知っていたが、事件のその後についてはほとんど知らなかったので、どうなったのだろうと興味があったが、半年後に久保山さんが亡くなった時点までの話なので、満足するにはほど遠い描かれ方だった。また他の乗組員についても細かなことはほとんど描かれていないし、水爆に対する監督の怒りも直接には感じられなかった。
DVDの「第五福竜丸のその後」というところもしっかり見ておきましょう。夢の島に展示してあるとは知らなかった。
大根と人参
65
(監)渋谷実、(出)笠智衆、乙羽信子、加賀まり子
会社人間として上司にへいこらしながらやって来たものの、4人の娘と妻から冷たくされる日々を過ごしていたサラリーマンが、ある日金策を頼まれ・・・
小津安二郎監督の原案を彼の死後映画化。質の悪いコメディで、話を展開させていく要素は悪いとは思わないが、会話やその内容は良いところなし。
加賀まり子と岩下志麻を並べて見ると・・・・今では加賀まり子の方が偉そうですけど。
大菩薩峠
60・105分
(原作)中里介山、(監)三隅研次、(出)市川雷蔵、中村玉緒、本郷功次郎、山本富士子
大菩薩峠 竜神の巻
60・90分
(監)三隅研次
大菩薩峠 完結編
61・98分
(監)森一生
完全な続き物で、初回の週刊漫画のような終わり方には少々びっくりした。内容についてはエンターテイメント色が強く、最初のうちは中村玉緒の初々しさも手伝って面白く見られたが、慣れて来るに従いお決まりの展開っぽくなっていったし、目が見えなくなったあとも相変わらず強いというのは現実離れしているし、最後もすっきりとした終わり方ではなかった。
太陽の墓場
60・88分・
(監)大島渚、(出)津川雅彦、伴淳三郎
大阪でチンピラをしている男や、日雇い労働者が多い長屋の住人や大家などの、社会の底辺の人々を描く。
社会の底辺や裏社会で、生きるために何でもやる人たちをしっかり描いていて、それぞれの登場人物もとても個性的。ただ登場人物の強烈さほどには、強烈に何かが伝わってくるというわけではなかった。何が悪いという点はないのだが、誰か中心となる人がいて、もう少し話に入っていけるものが欲しいと感じた。ちょっと厳しいが星三つ
ちょっとだけ本当の日雇い労働者が映されていたが、あの雰囲気を映画で出す、ってなことは至難の業というか、ほとんど無理な気がする。
丹下佐善余話 百万両の壺
35・91分・白黒
(監)山中貞夫、(原作)林不忘、(出)大河内伝次郎、喜代三、沢村国太郎
大名の次男坊が由緒ある剣術道場の婿養子に入ることになった。そしてみすぼらしい壺を持ってきたのであるが・・・。
片眼の剣使いが表に出ているので、てっきり座頭市っぽいのかなあと思ったら、何とびっくり見事なコメディドラマ。
名作とは聞いていたけど、こんなおもしろいものが作られていたなんて衝撃を受けた。
またDVDには日本語字幕がついていて、私は字幕付きでみたのだが(字幕無しではきついだろう)、何を言っているのか分かる反面、
話すより早く出てしまうのはよろしくないので、字幕を見ないようにしつつ、何をいっているのか分からないときだけ見る風にしてました。
また幻のシーンってのはわずかなので、幻のシーンは有り無しどちらでもいいのかな。有りで見ても、すぐこの場面かと気づきますし、あとでチャプターごとで見てもいいでしょう。
近松物語
54・102分・白黒
(監)溝口健二、(原作)近松門左衛門、(出)長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、小沢栄
暦を発行する許しを得、たいそう羽振りのよい店で手代を勤める男が、人助けのためと思って融通した金が元で、店主の怒りを買ってしまう。
つくりの良さは天下一品で、ここまで端正な映像で貫かれた映画はそうない。古典から話をとっているので、話自体は目新しくなく、初めのうちはそんなに面白くなかったが、後半名作といわれる良さが集約されていて、これぞ古典と唸らされた。
忠臣蔵
58・166分
(監)渡辺邦夫、(出)長谷川一夫、市川雷蔵、京マチ子、勝新太郎、鶴田浩二
豪華俳優勢揃いの一本で、1958年興行収入第一位。映画入場者数が過去最高を記録するのに一役買っている(この後テレビの普及に伴い映画観客数は減少していく)。
大作ということでつくりも豪華。衣装や町並み家屋などは華やかで良かったし(歴史に忠実ではないが)、言葉づかいなどもしっかかりしていた。内容は、細かく見れば問題点が多数。大石内蔵助が道で襲われたり、京マチ子演じる間者がいるはずもない。ただそういうメロドラマというか人情話を織り交ぜつつの話の展開というのも悪くなかったので、目くじらを立てるほどでもなかった。
数多くつくられている忠臣蔵のなかで、どれが一番良い出来なのだろうか。ちょろっと調べてみたら、案外まともな映画は少ないのね。特に最近は。
椿三十郎
62・98分
(監)黒澤明、(出)三船敏郎、仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、志村喬
家老らの私利私欲をむさぼる姿に意見を申し立てた若侍らが、今後の方策について話し合うため人気のない神社に集まった。そこにだらしない格好の侍が一人現れた。
「用心棒」のような、続き物とも思えるくらいの内容。少々展開がきついかなあと思えるところや、罪のない人を斬り過ぎだが、コメディっぽいところが良いのでさほど気にならなかった。
鶴八鶴次郎
38・89分・白黒
(監)成瀬巳喜男、(原作)川口松太郎、(出)長谷川一夫、山田五十鈴
三味線の弾き語りのコンビを組んでいた鶴八と鶴次郎は、お互い惹かれながらも些細なことで喧嘩を繰り返していた。
内容が大衆小説っぽいもので物足りなさを感じた。そのレベルの映画としてみれば悪くはない出来だが。私は話の内容より他の芸人の芸や、子供が遊んでいた街並みに興味をそそられた。それにしてもあんな燃えやすい建物で、火の棒振り回しちゃ危ないだろう。
天国と地獄
63・143分
(監)黒澤明、(出)三船敏郎、香川京子
会社の専務の息子を狙った誘拐事件が発生、警察官が地道に犯人を追う。
出だしは都合良く話が絡み、出来過ぎの感じがしてダメダメかと思ったが、地道な警察の捜査が始まってからはしっかりとした話になり面白かった。ただ、警官が犯人の刑を決めちゃいけません。
こういった地道な捜査をしていくドラマが昔はあったが、今はとんとなくなったね。寂しいかぎり。
東京オリンピック
65・175分
(監)市川崑
東京オリンピックの競技をまとめたドキュメンタリー。
東京オリンピックのことをほとんど知らないので、これを見たら分かるのかなあと思いつつ見る。出だしはオリンピックが開催される熱気が伝わってきたが、陸上競技が延々映されるに及んで見る気が減退。陸上見ていて面白い?さらに柔道の一本の瞬間をカットして敗者に移ったり、女子バレーが勝ったときにすっきりしない音楽を流したりと、作り手の何かしらの意図ですっきりと見られないという印象をもった。また他の競技に関しても、知らない人の映像が少々流れる程度なので、全く興味を持てなかった。
人物に焦点を当てないと、こんなにもつまらないものなのかな。
それにしても女子バレーの選手たち、ママさんバレーみたいだね。レベルもその程度だし。
どん底
57・137分・白黒
(監・脚)黒澤明、(原作)マクシム・ゴーリキー、(出)中村雁次郎、山田五十鈴、三船敏郎、香川京子
ゴーリキーのどん底を江戸の長屋に場所を変えて映画化。底辺に暮らす人々の悲哀を描く。
最初からうだうだとした会話が続くばかりで、どこに向かって話が進んでいくのだろうかと思いつつ見ていたが、どこにも話は進むことなくうだうだ話で終わり。人間のありのままを描くという点では悪くないのかもしれないが、主役もはっきりしないこの内容に面白味を感じなかった。
流れる
56・117分・白黒
(監)成瀬巳喜男、(原作)幸田文、(出)田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子
幸田文(幸田露伴の娘)の体験に基づく同名小説の映画化。柳橋の芸者屋に女中として働き始めた女は、しっかり者で気配りも良くすぐに皆の信頼を得た。しかしその芸者屋はいろいろな問題を抱えていた。
芸者屋の話といっても派手なところはなく、地味な普段の生活の場面が中心で、当時の様子と人の姿がしっかり描かれている。さすが一流の役者が勢揃いしているだけのことはある。また、最後も変なことせずに時代の流れを見せている点も見事。
私は小説を読んだことがあるので女中を幸田文と思って見ていたが、この映画だけだと女中の立場は微妙になっているかも。まあ、小説のほうも良かったので、そちらも読んでいただくということで。
楢山節考
58・98分
(監)木下恵介、(出)田中絹代、高橋貞二、望月優子
70歳になったら老人を山に置いてくるという習慣のある村を描く。
いきなりの三味線の弾き語りに少々戸惑う。何を謡っているのかも聴き取りにくい。
出だしモロセットっぽいので大丈夫かなと思ったが、それは最初だけで、絵巻物を再現しようとした大胆な映像とセットは見事で(明るい場面で奥行きが目立つところは少々気になるところもあった。)、特にラストは圧巻。また、ばあさんが歯を折ったり、喜んで山に行く所なんて価値観の違いに戸惑うものの、親おもう息子と親をないがしろにする近所の輩を見るにつれ、私なんて親孝行もせず、後者なんじゃないかと思わざるを得なかった。
弾き語りもそうだが、会話も少々聴き取りづらく、字幕もないので、ちょっと分かりづらいかも。今村昌平監督の楢山節考の方が、普通で見やすいと思う。
にあんちゃん
59・101分・白黒
(監・脚)今村昌平、(原作)安本末子、(出)長門裕之、吉行和子、殿山泰司、松尾嘉代、穂積隆信、二谷英明
炭坑で働いていた父が死に、残された兄弟姉妹4人で生活せねばならなくなった。しかしその生活は苦しく、兄と姉は遠くへ仕事に出、弟妹は他人の家で面倒を見てもらうことに。
人情味あふれる貧乏映画の傑作。幅広い層にお薦めできる。このあとに「キューポラの街」が出来て、系統は同じ。
二階の他人
61・56分・白黒
(監)山田洋次、(出)小山一也、葵京子
家を新築したものの家計は厳しいので、2階を間貸しすることにした。そこに色々問題のある人が住み始める。
60分ほどの短い映画。シリアスな貧乏話のなかのコメディで、人情ものコメディとでもいえばいいのか、最近はあまりみないタイプの映画。まあ普通の生活を描いた映画自体が少ないしね。で、内容自体はまずまずだし、小ネタなども適度にちりばめられていて、まあまあの出来。ただ面白いというほどでもないのは、短い映画でこれという特徴もないからか。
肉体の門
64
(監)鈴木清順、(出)宍戸錠、野川由美子
戦後の混乱が続くなか、娼婦をしている女達は自分らのグループを作って金を稼いでいた。そんな中にまた新たにひとりの女が加わった。
派手な服装をしたケバケバしい女や、セットとしか見えない町、白ける演出と、事あるごと新たな場面になるごとにがっかりウンザリさせられた。
二十四の瞳
54・156分
(監)木下恵介、(原作)壺井栄、(出)高峰秀子、天本英世、夏川静江、笠智衆、田村高廣
瀬戸内海の小豆島に新任の先生がやって来た。最初のうちは子供をはじめなかなか馴染んでくれなかったが、次第に仲良くなっていく。しかしこんな小さな島にも戦争の影響が及びはじめる。
87年制作の二十四の瞳は出だしからつまらなかったのに対し、こちらはそんなことはなく、戦前当時がこんな風だったのだろうと思える映像に懐かしさを感じたし、歌にしても新しいのと何が違うのか分からないが、素直な響きがあった。こんな私でも2度涙を流しましたよ。
この映画を若いとき見るのはもったいないかも。
肉弾
68・118分・白黒
(監・脚)岡本喜八、(出)寺田農、大谷直子、天本英世
米軍の爆撃が続き、本土上陸も間近と噂される中、敵戦車に対し爆弾を持って肉弾攻撃を仕掛ける特攻隊員となった男が、女郎屋で清楚な女性と出会った。
少々下品な感じするコメディが混じった独創的な展開の話で、特攻隊といえばお涙ちょうだいするのが常なのに、それよりも人間の本能に忠実に泥臭く描いている点はとても良い。ただしつこい感じがする点もあり素直に好きという訳ではないので星三つ半。初めて見たかと思っていたら、裸のシーンだけは覚えていた。下の方が素直だ。
にっぽん昆虫記
63・123分・白黒
(監)今村昌平、(出)左幸子、岸輝子、佐々木すみ江、北村和夫
大正7年東北の田舎で生まれた女性は、父に特別な愛情を抱きつつ育ち、戦後の日本で売春斡旋などの仕事をしながらたくましく生きていく。
タイトルから昆虫販売する人とか昆虫博士とかが出てくるのかと思いきや、地べたにはいつくばっても生きていく一人の女性の姿を描いているだけで、直接昆虫と関係がない。そこでちょっと肩すかしだが、期待が大きかったので、全体的にも少々物足りないというか、確かに一人の女性の姿をうまく描いているのだが、描かれている期間が長いのと、ひとつひとつの話がそんなに面白いといえるほどではないので、そんなに好きな映画ではなかった。
田舎に生まれた女性を描くという点で「赤い殺意」と似ている点があるが、私は「赤い殺意」の方が好き。また、この映画でも「赤い殺意」のようにばあさんが唸っていて、こちらの方が聞き取れた。
日本のいちばん長い日
67・157分・白黒
(監)岡本喜八、(出)宮口精二、戸裏六宏、笠智衆、三船敏郎
広島長崎に原爆が落とされ、さらに終戦交渉を依頼していたソ連が参戦し、どうにもならない状況になった日本。そんななか御前会議で終戦と決まり、玉音放送が放送されることになったが、陸軍の一部には反乱を企て戦争続行を画策するものがいた。その様子を阿南(あなみ)陸軍大臣を中心に描く。
以前、阿川弘之の「米内光政」という本を読んで、終戦の様子を知ったが、この映画に描かれている陸軍の反乱の企てについては知らなかった。一億玉砕などと叫んで実際沖縄ではそうなったのだから、もし終戦が遅れていたらと思うとぞっとする。
またアメリカの無差別攻撃を許すわけではないが、今の我々から見てもクレイジーと思える人たちが大勢いたのを見ると、当時のアメリカの日本の見方についてどうこういえるものではないなあ。こっちも鬼畜米英と言っていたんだし。是非見るべし。
日本橋
56・111分
(監)市川崑 、(出)淡島千景、山本富士子、若尾文子
日本橋で多くの芸者を抱え、自身も名の通った芸者の女のもとに、やつれた男が現れる。
映像が派手というか印象的なつくりになっているのだが、何だか浮世離れした感じ。さらに内容が月並みなせいか、登場人物の心情がさっぱり伝わってこず、さっぱり面白くなかった。
人間
62・117分
(監)新藤兼人、(出)殿山泰司、乙羽信子、佐藤慶
4人が乗った船が嵐で遭難、船内の食料を食いつなぎ救助を待つが・・・
極限の状況に追いつめられた人間を描いた傑作。殿山泰司がいい味出してます。
人間蒸発
67・130分・白黒
(監・出)今村昌平、(出)露口茂
一人の男が失踪した。妻は夫を探すため、映画に出るという方法で夫の公開捜査に乗り出す。しかし話は意外な方向に・・・
出だし夫を捜してまわっているうちは映像の動きもないから退屈だったが、探している妻の方に話がうつり始めてから俄然面白くなった。そして映画ともドキュメンタリーともつかぬゴタゴタ加減がまた面白い。こんな自由というか無茶な映画、今じゃなかなか出来ないねえ。
ちなみに露口茂は妻に付き添いつつ、聞き込みをしたり、妻の心境を聞いたりして、太陽にほえろのやまさんそのままって感じでした。
人間の條件 (全6部)
59〜61・白黒
(監・脚)小林正樹、(原作)五味川純平、(出)仲代達矢、新玉三千代
兵役を免除されると聞いて満州に渡った梶は、そこで中国人労働者の管理を任される。しかし日本兵の中国人に対する過酷な仕打ちに反抗したところ、逆に目を付けられてしまう。
よくぞここまでのものを作ってくれました。特に当時の中国の日本兵の様子が、さもそうだろうと思えるように描かれているのは、戦争を知らない私にとってはこれが過去の現実として認識してしまうほどだ。また仲代達矢の気迫は日本映画史に残るものだ。必見必修。全6部だが、1本1本の時間は短め。
盗まれた欲情
58・93分
(監)今村昌平、(原作)今東光、(出)長門裕之、南田洋子、滝沢修
都会では人気のない小さな一座の演出家をしている男、大学を中退してまでこの仕事に打ち込んだが、この先どうしようか迷っていた。そんななか田舎巡業にでた。田舎では大人気なのだが、その巡業先でいろいろ問題が起こるのであった・・・
今村昌平初監督作品。
旅の一座や田舎の様子が伝わってくるしっかりとしたつくりだが、今東光原作なので、話の内容が一昔前といった感じ。また、主役の演出家にもあんまり特徴がなく、何を目指しているのかこちらに伝わってこなかった。
白昼の通り魔
66・99分・白黒
(監)大島渚、(原作)武田泰淳、(出)川口小枝、小山明子、佐藤慶
とある事件がきっかけになり、異常な執着心にとりつかれた男が、強姦殺人事件を起こしてしまう。
緊張感のある出だしだが、話が進んでいくにつれ、犯人の周囲の人たちの行動が腑に落ちないことだらけになってくる。特に発端となった男の行動はよく分からない。逆に犯人の方はそれなりに納得できる描き方ではある。
全体的につくり自体は良いものの、頭でっかちというか極端な方向の話になって、実感としてこちらに伝わってくるものはあまりなかった。
幕末太陽傳
57・110分・白黒
(監・脚)川島雄三、(脚)今村昌平、(出)フランキー堺、左幸子、南田洋子、石原裕次郎、金子信夫、小沢昭一、岡田真澄
古典落語の「居残り左平次」をもとにした話。品川の遊郭でさんざん飲み食いしたあげく、そこに居着いてしまったお調子者の客が、様々なトラブルを次々解決して、そのついでにしっかりお金儲けをしていくのであった。
遊郭の様子をきっちり描いている点や、様々な問題を解決していく様子は面白いのだが、ただそれだけで、大きな話の流れというものが見あたらず、最後もすっきりした終わり方ではなかった。左幸子が綺麗で、プロフィールを見てみると、富山県出身だそうな。知らなかった。
橋のない川
69・127分・白黒
(監)今井正、(出)北林谷栄、長山藍子、伊藤雄之助、小沢昭一
大正年間、奈良の小森という地域には部落の人たちが住んでいた。彼らは多くの人から差別を受けつつ暮らしていた。
部落解放というための映画なので、普通の映画よりも押しが強いし、少々一面的な印象もある。
さらに昔の話ゆえに差別の程度が実際どの程度だったのか見当もつかず、1話目の子供までお決まりの如く差別するのは、バランスを欠いているようにも見えるところもあった。
ただ地面にはいつくばって生きている彼らの生活をきちんと描いているし、伊藤雄之介演じる酒飲みオヤジや、北林谷栄演じるばあさんはとにかく強烈だった。
米騒動に部落の人たちが多数参加していた、という事は初めて知った。
裸の島
60・96分・白黒
(監)新藤兼人、(出)乙羽信子、殿山泰司
瀬戸内海に浮かぶ小島を耕している夫婦を描く。
会話がない。延々と畑作業が描かれるだけでほとんどストーリーもなく、さすがにつまらなかった。
果しなき欲望
58・100分・白黒
(監)今村昌平、(出)長門裕之、中原早苗、西村晃、殿山泰司、小沢昭一
元軍隊にいた男たちが、土の中に埋めたモルヒネ入りのドラム缶を掘り出すために集まった。しかし埋めた場所に行ってみると・・・
コメディの要素も入ったサスペンス。登場人物の特徴がしっかりしていて、仲間うちでもめたときのやりとりが見事です。そもそもあんなたいそうな事をする必要があるのかとか、ラストへの入り方など、ツッコミどころがないわけでもないが、それでも面白いです。
キューブリックの「現金に体を張れ」の方が先だが、こっちの方が断然面白かった。
花咲く港
37・83分・白黒
(監)木下恵介、(出)小沢栄太郎、上原謙、笠智衆、東野英二郎、水戸光子
鹿児島県の離島で以前造船業をしていた男の息子がやって来た。島の人たちは息子を温かく迎えるのだったが・・・。
昭和18年の映画だが、人情味あるコメディとして見事な出来で、脚本の教科書に載せたいくらいうまい。勉強になります。昔の映画なので甘めに星三つ半。最近では「大いなる休暇」が同じ系統。
ちなみに木下恵介監督は「父」という鹿児島出身のオヤジの話を撮っているが、この映画の舞台も鹿児島の離島で、もしかして鹿児島大好きだったのだろうか、鹿児島大好きの私としては気にかかる。
母
63・101分・白黒
(監・脚)新藤兼人、(出)乙羽信子、杉村春子、殿山泰司
ダメ夫と離婚し母と暮らしていた女の子供が重病にかかった。その手術費用のため女は好きでもない男と結婚する。
男運がなく生活に苦労する女を描いているのだが、出だしからどうも面白さを感じないのは何でだろう。話の内容から登場人物の描き方など特に悪いというほどのものは見あたらない。ただ大きな出来事が一つならまだしも、二つも起こってしまうというのは、地味な生活を描いた話としたらやりすぎに思えるし、自動車練習の場面も同様。また父の話も悪くはないけど、普通にいてくれても良かったように思えるし、主人公のふらふらするのも子供とかぶっている。それが原爆の影響なのかとも思ったが、描かれているわけでもなく、少々分かりづらかった。
張込み
58・116分・白黒
(監)野村芳太郎、(原作)松本清張、(出)大木実、宮口精二、高峰秀子、高千穂ひづる、田村高廣
殺人犯の手がかりを求めて佐賀に来た警視庁の捜査員が、犯人の元恋人、現在は普通の家庭の母である女の監視を始めた。
派手なところのほとんどない、実際の警察官に同行しているかのようなつくりと内容で、はじめのうちはあんまり関係のなさそうな事が多いのに、それでも面白いのは何でだろう。他人を監視するってのが面白いのかな。また、ふたりの警察官もごく普通の警察官ながら、彼らの家庭を描くことによって、人間味が出ている点も良い。家に帰った警察官はあんまり描かれないからね。そして、ラスト前の盛り上がるところから、ラストビシッとまとまっている話はお見事です。
非情都市
60・90分・白黒
(監)鈴木英夫、(出)三橋達也、司陽子
記事のためなら何でもする男が、財界を巻き込んだ大きなネタを手にした。ところがその過程でまずいことをしてしまう。
新聞記者を描いた映画で、内容が甘くないのは良く、社会派映画の王道を行っている。また新聞社という組織を描いている点も評価できる。ただ、主役の記者がつかんだ話と事件の真相が分かりづらい。一体誰が悪いことをしているのか、長々と述べなくても、有名俳優が悪役としてちょろっと出て来る程度の説明が要ったように思える。またここから一歩進めて、きつい一面だけでなく、人情味あふれる登場人物をいれてバランスをとれば大作という印象になるのだろう。
ビルマの竪琴
56・116分・白黒
(監)市川崑 、(原作)竹山道雄、(出)三國連太郎、安井昌二、西村晃、北林谷栄、伊藤雄之介
敗走中のビルマの日本兵はタイ国境付近で終戦を知り投降した。しかし一人の兵士がいまだに抵抗を続ける日本兵の説得にあたるため部隊を離れた。
竪琴や歌があまりにもうまいので、少々浮いている感じがしたが、徐々に慣れていった。また谷栄さんやオウムなどで、重くなりそうな話を明るくしている。というか兵士が歌を歌って竪琴をぽろりんぽろりんと弾くなんて、なかなか奇抜な発想で面白い。内容に関してはしっかりしているし、ラストも良いのだが、ちょっと期待しすぎというか感動しようと待ち構えすぎたかな。
豚と軍艦
61・108分・白黒
(監)今村昌平、(出)長門裕之、吉村実子
ヤクザの子分として横須賀の街をふらふらしている若者は、上のものからいいようにあしらわれ、人の罪を着て刑務所に入ってくれと頼まれていた。そんななか唯一彼をかわいがってくれていた兄貴が病気で寝込んでしまい、様々な災難が彼に降りかかってきた。
最初のうちは何をしゃべっているのか聞き取りづらいところもあったが、それでも当時の話し言葉が結構面白い。パーテーってのは笑える。で、内容はヤクザものというよりチンピラの話で、少々おつむの弱いが威勢だけはあるというお兄ちゃんの話。ラストはもうコメディだが最高の出来。
炎と女
67・102分
(監)吉田喜重、(出)岡田茉莉子
無精子症と疑われる夫の妻が人工授精で子供を産んだ。しかし本当の父が誰か疑いが深まるのであった。
誰の子などという全く面白味のない内容が延々続く。会話もひどい。
乱れ雲
67・108分
(監)成瀬巳喜男、(出)加山雄三、司葉子、草笛光子
交通事故で夫が死んだ。ひいた方の男は、何とか残された妻に償いをしようとするが・・・
成瀬巳喜男監督の遺作。話の内容がいまひとつで、人を轢いた加山雄三が開き直っているというか、人の目は気にしても人を轢いたことに関しては全く罪の意識がないという、あんまり納得できない内容。残った妻の方も、あんまり感情を表さないので、見ているこちらもすっきりしない。
野獣の青春
63・92分
(監)鈴木清順、(出)宍戸錠
腕利きの男がやくざのしまを荒らし、ついには事務所のある店までやって来た。組では彼の腕を買って用心棒として雇うが・・・。
テンポ良く話が進んでいくのはいいのだが、その反面ことがうまく運び過ぎにも見え、緊迫感という点では少々劣る。また活劇風の内容は今から見れば取り立てて良いところがあるわけではないが、きっちりまとまっている。私はこのDVDを鈴木清順監督ということで借りたのであるが、宍戸錠主演の映画は借りるのを躊躇してしまう。見ずに言うのも申し訳ないが。
薮の中の黒猫
68・108分
(監・脚)新藤兼人、(出)中村吉右衛門、大地喜和子、乙羽信子、佐藤慶
平安時代、羅生門に猫のお化けがでて人を襲い始めた。それを退治して名をあげようと一人の武人が向かったが・・・。
怨念をもって死んだ人が黒猫の力を借りて蘇り復讐するという、日本の正統派もののけ映画。内容に目新しさはないものの、しっかりとしたつくりで、こういったものを参考にしたホラーをつくって欲しいものだ。
だけどホラーをつくろうという段階で金目当て以外考えられないご時世だから、無理な話か。
酔いどれ天使
48・98分・白黒
(監)黒澤明、(出)三船敏郎、志村喬、山本礼三郎、木暮実千代
口が悪く酒好きだが情のある町医者が、一人のヤクザ者の面倒をみようとするが、彼の無茶な行いは変わらないのであった。
医者が主役の映画としては「赤ひげ」の方が有名かもしれないが、「赤ひげ」は少々真面目すぎて私はそんなに好きではない。一方この「酔いどれ天使」は、話の内容展開と登場人物の生き生きしているさまは素晴らしく、脚本を書くお手本のような出来で、とても面白かった。
夜の河
56・104分
(監)吉村公三郎、(出)山本富士子
反物の染め付けをしている女性が、妻子ある大学教授と出会って恋に落ちた。彼女を崇拝する美大生はそのことをやっかみ、父は娘をやさしく見守るのであった・・・。
京都の染め物師の話で、話の内容と題材はいかにも日本文学といったところで、それを映画にしているから正統派日本映画って感じがする。ゆえに話の内容自体はまずまずというレベル。また終わりに余韻がないのと、大学教授が単なるおっちゃんに見えたのが欠点と言えば欠点か。でも当時の日本人女性像とも言える山本富士子は綺麗だし、着物の美しさと京都の風情を感じるつくりは素晴らしい。こういう映画をリメイクして欲しいね。
「花いりまへんかー、お花どうどすー」という花売りの呼び声にはびっくりしたよ。
喜びも悲しみも幾歳月
57・160分
(監)木下恵介、(出)佐田啓二、高峰秀子、中村嘉葎雄
灯台守として小島や辺鄙な場所を転々としながら生活する一家を描く。
名前からある程度予想はしていたが、「大草原の小さな家」っぽい内容の灯台守家族ドラマ。良いシーンもあるし、ほのぼのドラマとしたら良い出来だが、150分は長く感じた。
陸軍
44/87分・白黒
(監)木下恵介、(出)笠智衆、杉村春子、田中絹代、東野英治郎、上原謙
お国のため尽くそうとする一人の少年が出征するまでを描く。
戦闘シーンはないものの、国のため天子さまのため戦うぞという、これぞ軍国映画という内容。つくりはしっかりしているから星二つだが、ここまでやられると軍の宣伝という色合いが出てしまっている。まあ、戦争中は普通だったのだろうが。
我が青春に悔なし
46・110分
(監・脚)黒澤明、(出)原節子、大河内伝次郎、藤田進
軍部の力が強くなり、自由な発言が封じられるなか、京都大学教授の娘が、父の教え子である男に惹かれた。ただその男は自分の正義に忠実であり続けようとしたため、警察に目を付けられてしまう。
終戦後すぐに京大事件をモチーフとした作品を作るところに感服。
話は原節子演じる女性の恋が中心だが、その描かれ方のしっかりしたこと、感情だけに流される恋愛ものとは大違いだ。さらにそれを演じた原節子が素晴らしく、特に出だしの一言のあとの原節子の表情は、役者なら出来るまで練習すべしと思えるくらいだ。
満点でないのは、後半そこまでやるのかねと思えたから。全体で見ると問題ないんだけど、急に場面が転換してついて行きづらかった。
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